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[報告]会員研究会
 「中国BPOによる本社のグローバル化―日本の企業の低迷を打開するためにはグローバル文化へのトランスフォーメーションが必要だ―」と題し、2009年12月24日(木)に東京・NHK青山荘において、スウィングバイ2020(株)代表取締役社長海野惠一氏が講演した。概要は下記の通り。

中国BPOによる本社のグローバル化―日本の企業の低迷を打開するためにはグローバル文化へのトランスフォーメーションが必要だ―
スウィングバイ2020(株)代表取締役社長
海野 惠一 氏
総論
 日本経済は1993年までは順調に成長してきた。バブル崩壊後は景気が低迷したままだ。この状態がいつまで続くのか。最大の原因は日本の閉鎖性にある。それをどうのように打破して行くかで今後の日本企業の将来が決まる。そのキーがグローバリゼーションだ。ではどうしたらいいのか。この言葉はどこの企業の経営課題に何十年もあがってきていて、そのままだ。本研究会はその打開のキーが中国にあると言うことと、その手法がBPOにあると言うこの2点を日本企業のグローバル化のトリガーとしたい。
 まず中国だが、この国は有史以来、多民族国家で、多言語、多文化、多民族、多宗教の国で、国そのものが実はグローバルと言える。それと、もう一つのBPOは日本の企業の本社業務を「長崎の出島」のように海外に持って行くことを意味する。と言うことは日本の企業の中に中国人を手段として、グローバル化を図って行こうと言う考えだ。本社の生産性も30%は上がる。そう言う意味からしても革新だ。
日本は国際競争力がない
 このままでは日本がダメになる。1993年から日本は失われた10年と言うが、もう17年も経ってしまった。中国は1990年代の変革を経て、2001年にWTOに加盟してグローバル化に拍車がかかった。まさしく、老化する還暦日本、急成長の躍進中国だ。昨年の第4四半期には日本は15%もGDPが落ち込んだ。
 日本は国際的に競争力が全くないと言っていいだろう。この10数年で、どんどん落ちて行った。もしかしたら、元々国際競争力がなかったのかもしれない。その一方で、中国がどんどん競争力をつけてきた。今年は日本を抜いて、GDPで世界2位の座につくだろう。この国際競争力に於いても数年前に日本をあっさり抜いてしまった。それは中国が静かな革命に等しいくらいの変革を1990年代に遂げてきた一方で、日本は何も変化しなかったからである。それと中国は2001年にWTOに加盟したのを機会に国家政策としてFree Trade、Free Investmentを推進してきた。であるから、現在の中国は日本より遥かに投資環境が良い国になってしまった。
 日本の政府が外国人の採用を勧告しているが採用しようとはしない。企業の外国人の採用はこれからだ。2050年には今の労働人口が半減してしまう。1,000万人の外国人が日本に移住してこないと国力が維持できない。もう既にそれができないとわかっている。日本はいったいどうすれば良いのか?
日本は生産性が悪い
 日本の生産性はなぜ悪いのか?悪いと言うことを知らないのは日本人だけかもしれない。「あうん」という以心伝心が常識の範囲を狭くし、仕事の範囲も狭くしてしまった。製造業の生産性だけしか高くない。だから、日本人は日本の生産性が高く、技術力があって、世界をリードできると思っている人が多いが、今はそんなことは全くない。2007年度の財団法人 社会経済生産性本部の統計だが、OECDの30カ国の内、日本の労働生産性は製造業が第6位だが、全体では20位だ。決して高くない。
日本の「あうん」が仕事の効率を阻害している
 中国人に「あうん」はない。ギブ・アンド・テイクが良いとは思わないが、「あうん」よりは30%も効率が高い。中国人は自分の責任範囲を明確にするために、きちんとマニュアルを書く。中国のIT産業はもう既に、日本の2倍の生産性を上げるまでに成長した。それは労務管理のやり方と人材の数、質が違うからだ。BPO産業の生産性はまだ低いが、IT産業と同じで、今後はダブル・パーフォーマンスが期待できる。
中国はグローバルだ
 多民族、多言語、多文化、多宗教。言語だけでも5〜600言語はある。ものすごい数の方言だ。人口の9割りは漢族、その他が55の民族。漢民族と言っても北と南とでは全く違う。もっと不思議なのは5,000年経っても戦争ばかりしてきたにもかかわらず、国家の地図はこのままだ。かのタジマハールを築いたインドのムガール帝国ですらわずかに150年だ。今のインドの国は1945年からでしかない。
中国人のコミュニケーションは三十六計がその根本にある
 中国人はコミュニケーション・スキルだけではない。ネゴシエーション・スキルにおいても日本人をはるかに凌駕している。 三十六計の第一計、瞞天過海は「中国人は本音を決して言わない」ということを意味する。中国人の家族はこの三十六計を子供に徹底して教え込む。生きて行くための術だからだ。日本にはこうした処世術は不要であった。これからは違う。アジアで生きて行けない。
中国の経済成長率はすごい
 この中国の経済成長率は成長していない農業も含めた平均値である事を認識する必要がある。上海市と貴州省とでは12倍も違う。すなわち、4億の人たちが9億の人たちに足を引っ張られていると言うことだ.日本人は物事を平均でしか見ることができない。だから、中国の実態が把握できない。昨年度あれほど景気が悪いと言われていたが、それでも8.7%だ。中国のGDPは今年は日本を抜いて第二位になる。あきらかに、G2を狙っている。2020年にはアメリカも抜く。
中国の学生の数2,800万人は中途半端ではない
 中国は科挙の国だ。本屋はどこに行っても立ち読み、座り読みで超満員だ。日経ビジネスのような雑誌に「財経」と言うのがある。歴史熟語がたくさん挿入されているから、日本人には漢字は読めても、意味はわからない。2,700万人の大学生と600万人の大学卒業生がいる。この10年で10倍になった。日本の中学生の平均の勉強時間は8.5時間だが、中国では14.5時間だ。勉強の仕方こそ違うが、日本人にとっては脅威であり、チャンスだ。
中国の組織はグローバルそのもので複雑だ
 例の一昨年の餃子問題に関連した中国の政府組織は以下に示す通りで、日本とは全く違って、連邦制だ。中央政府の意見が省、市にストレートには伝わらない。しかも、中央政府ですら、部間の連携は最悪だ。だから下記の組織図は上下左右が切れていて、繋がっているのは石家庄市人民政府と天洋食品の縦系列だけだ。だから、日本の警視庁と中国の公安部が話し合いをしても意味のないことだ。これがグローバルの縮図だ。日本人にはそう言うことが理解できない。

中央政府 公安部、外交部、農務部、衛生部
河北省人民政府
石家庄市人民政府
天洋食品
日本にはアジアをリードできる価値観がある
 実は日本は今までの歴史において世界はもとより、アジアをリードしたことがない。遣唐使、遣隋使の頃から日英同盟、満州建国、アメリカの占領、国連への参加、京都議定書。どれをとってもアジアをリードしてきていない。わずかに1936年から1945年の間に日本政府がアジアをまとめようとしたことがあった。また、戦後、アジアでの経済の先頭を行く雁型経済としてリードしたことはあったが、もはや、現在はアジアの一員でもなくなりつつある。
 唯一日本に残された優位性は武士道だけだ。日本人は戦争に負けてから、日の丸と国家と漢学素養と歴史を捨ててしまった。日本人の価値観である「真面目」「正直」「勤勉」「嘘つかない」は世界の中で貴重な文化だ。
日本が今のままで良い訳がない
 西暦2020年には日本は今のままでは失われた30年になってしまう。今日本人に必要なものはこの中国の活気と躍動感、先を見たビジョン、チャレンジ精神、幅広い常識、グローバリゼーションだ。勿論、中国にも悪い面はたくさんあるが、良いところもたくさんある。
 中国は今年、G20においても、アメリカ合衆国と並んだポジションを確保した。今年の世界景気の牽引役は中国であり、自他ともに認めている。日本は蚊帳の外だ。3位ではあっても、転げ落ちている。既に日本は世界の檜舞台では相手にされなくなってしまった。6ヶ国協議ですら鼻つまみだ。日本は拉致問題を優先しようとするからだ。
 最後に、日本が今、グローバリゼーションを進めるためにはこの中国人と組む必要がありそうだ。中国はこの5000年の歴史の中で戦争ばかりしてきた。漢民族と言うが、北方民族と南方民族はどう見ても同じではない。しかも中国語が制定されたのは1982年だ。それまでは標準語はなかった国だ。だから、コミュニケーションとかネゴシエーションのスキルは日本人の比ではない。さらに資本主義を導入してからもまだ20年しか経っていないし、国も若い。今私が行っているビジネスはこの日本の企業の本社の一部を中国に持って行って、日本の本社の活性化とグローバリゼーションの促進を図っている。保守的な日本の社会で、こうしたアクションをとる企業はまだ少ないが、効率の悪い今の日本のやり方では外国の企業に勝てない。
海野 惠一(うんの けいいち)氏  プロフィール
海野 惠一(うんの けいいち)氏
スウィングバイ2020(株)代表取締役社長

 1948年 1月生まれ。
 1971年 東京大学経済学部卒業。
 1972年 アーサーアンダーセン入社。
 1973年 米国シカゴ駐在(一年間)。
 1985年 アーサーアンダーセンからアンダーセンコンサルティングに社名変更。
 1985年 同社名古屋事務所長。
 1988年〜同社経営戦略サービスグループリーダー、石油業アジアパシフィックリーダー、素材・
      エネルギー本部統括パートナー。
 2000年 アンダーセンコンサルティングからアクセンチュアに社名変更。
 2001年 同社代表取締役就任。
 2004年 スウィングバイ2020(株)代表取締役社長、
 現在に至る。

【主な専門スキル】
・2006年、大連へ日本本社の一部移転を誘致。同年上海にて日本企業の中国人社員のキャリアパス
 プログラムの設計。
・1992年以来、中国におけるビジネス立ち上げ支援サポートの実施、他。

【主な社外活動】
・大連市星海友誼賞 受賞
・日本青年会議所 日中友好の会 特別顧問、他。

【その他】
・大連高新技術産業園区招商局 高級招商顧問、他。
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